花の雨滴  0701

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特集ワイド:自民党改憲案 アノ独裁国家そっくり? 毎日新聞 2015年06月30日 東京夕刊

(1)「公民は国家の法および社会主義的生活規範を守り(中略)尊厳を守らなければならない」
(2)「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」
(3)「国民は憲法および法律を順守し(中略)社会の公徳を尊重しなければならない」

 (1)は北朝鮮憲法82条、(2)は自民党憲法改正草案(2012年)102条、(3)は中国憲法53条だ。
どれも国民の憲法尊重義務、つまり「国民は憲法を守れ」ということだ。
 もっともらしく聞こえるが、今の憲法にこんな規定はないし、主要7カ国(G7)首脳会議参加国のうち米国、英国、フランス、カナダにもない。
残り2カ国、ドイツ、イタリアはナチズムやファシズムへの反省という歴史的理由から、自由や民主主義をうたう憲法の擁護義務を国民に課している。
ちなみに韓国や豪州はもちろん、旧大日本帝国憲法にもない条文なのだ(ただし憲法発布時の「勅語」には「臣民は憲法に対し従順義務を負う」とある)。
 「ここに自民党の目指す国家像が透けて見える」と指摘するのは、憲法学を専門とする早稲田大教授の水島朝穂さんだ。
「まず憲法は国家権力を縛る目的で制定するもので、国民を縛り、従わせるためのものではないのです。
これが立憲主義、つまり近代国家の基本であり憲法を守る義務すら国民に押しつけてはならないという考えで、だからこそ米英仏などには規定がない。自民党の改憲案はそこを逆転させ国民を縛る、という。北朝鮮や中国に近い考え方です」

 歴代政権や憲法学者が違憲とした集団的自衛権行使を「『限定的』なら合憲」と独自論理を展開し始めた安倍政権。
保守派で改憲派の慶大名誉教授の小林節さんも「法の支配を無視した独裁政治だ」(22日の衆院平和安全法制特別委など)と批判してきたのはご存じの通りだ。
その「独裁政治」の最たる北朝鮮や中国そっくりの条文、自民党改憲案のあちこちにある。

 水島さんが解説する。「改憲案の前文は『日本国は長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴(いただ)く国家であって……良き伝統と……』などとある。憲法に文化や歴史、伝統について特定の見方を書き込むのも北朝鮮や中国と同じです」
 確かに中国の前文は「中国は世界で最も古い歴史を有する国の一つである。中国の諸民族人民は、ともに輝かしい文化を築き上げ、栄光ある革命の伝統をもっている」、北朝鮮も「(北朝鮮は)偉大な領袖(りょうしゅう)金日成同志と偉大な指導者金正日同志の思想と指導を具現した主体(チュチェ)の社会主義祖国である」とある。
 自民党は「前文は、我が国の歴史・伝統・文化を踏まえた文章であるべきですが、現行憲法にはそうした点が現れていません」(党作成の問答集)と主張するのだが、水島さんは「何を根拠に言っているのでしょうか。少なくともG7(前文自体がない英国を除く)で歴史やら文化やらを書き込んだ国はありません。
多様な意見を共生させていくのが立憲主義の基本であり、自由民主主義です。
だからこそ、憲法は特定のモノの見方に踏み込むことに抑制的なんですが……」とため息をつく。

 さらに改憲案の最たる特徴がある。

水島さんは「義務や権利制限は、独裁国家、社会主義国の特徴です」とした上で、先ほどの憲法尊重義務のような「国民の義務」の多さを指摘するのだ。
 数え方にもよるが、改憲草案は「国防」(前文)「国旗・国歌の尊重」(3条)「自由・権利に伴う責任・義務」(12条)「家族の助け合い」(24条)「地方自治体の役務の公平な負担」(92条)「緊急事態宣言下での国・自治体の指示への服従」(99条)「憲法尊重」(102条)と、新たに七つの規定を設けた。
現在もある納税、勤労、教育の三つを加えると10になる。中国は11、北朝鮮は8だ。付け加えれば、改憲案は「国の領土・資源の保全」「環境保全」で「国民の協力」も書き込み、これを「事実上の義務」と見る識者もいる。
 「自民党の問答集に『立憲主義は義務規定を設けることを否定しない』とあるが、疑問です。欧米の自由主義諸国では義務規定は極めて少なくかつ例外的。自民党案はこの点でも北朝鮮や中国と似るんです」(水島さん)

 なぜこんな改憲案が出てくるのか。
小林さんは「今の自民党は世襲議員だらけ。子供のころから『若殿様』のように周囲から扱われ、エリート意識がある。だからこんな『上から目線』の憲法ができあがる」とあきれていた。

 もちろん、そんな人ばかりでは決してないだろう。それでも「上から目線」傾向、タカ派として知られる清和会が自民党最大派閥になってから、より顕著になったらしい。
 ある自民党議員は「小泉純一郎、福田康夫、安倍と清和会出身首相は多くが世襲。あそこは血の派閥なんだ。強権的かは分からんが、ここ十数年で党全体がタカ派的な、風通しが悪くなったような印象を(国民は)受けるかもしれない。
改憲は必要だとは思うが……」と言葉少な。確かに今度の安保法制でも、声を上げて疑問をぶつけるのは元行革担当相の村上誠一郎衆院議員ぐらいだ。
そう言えば村上さんも「今の党内は『物言えば唇寒し』。議員が固守すべき立憲主義の危機なのに、誰も声を上げない」と嘆いていた。

◇自由、ここにあったのに……
 自民党結党14年にあたる1969年に制作した党のイメージソング「話しあいのマーチ」をご存じだろうか。非売品で、関係者に配布されたレコードのようだ。水島さんがその貴重な1枚を持っていた。作詞は星野哲郎さん、水前寺清子さんが熱く歌いあげる。安倍首相、そして全自民党議員にぜひ聴かせたい。

 ♪云(い)いたいことはなんでも云える 自由がここにあるんだぜ(中略)心と心の 空間を みんなの意見で埋めよう 互いに一歩 近よるだけで 場面はぐっと 広くなる 話しあおうよ 隠さずに 話しあおうよ 恐れずに……

 時の首相は佐藤栄作氏。安倍首相の大叔父である。より国民を縛る改憲案を作り、安保法案を批判する憲法学者ら各界の声を「学者は憲法9条の字面に拘泥し過ぎる」(高村正彦副総裁)と無視する自民党。まさか朝鮮労働党や中国共産党を手本にしているわけではなかろうが、これでは「自由民主」の名が泣くのではないか。
by hoshigarasu2 | 2015-07-01 19:13 | スナップ


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